『ソウルフル・ワールド』
ディズニー&ピクサーの“泣ける名作”3本が公開中ですが今回ご紹介するのは4/12(金)公開『ソウルフル・ワールド』です。
主人公はジャズピアニストになることを夢見ている音楽教師のジョー。ついにそのチャンスが訪れたにも関わらずマンホールに落下してしまう。ジョーが辿り着いたのは人間として現世に生まれる前にどんな自分になるかを決める、ソウル<魂>の世界。ジョーはそこで人間になるための興味が見付けられずにいる“22番”と呼ばれるソウルと出会う。夢を叶えるために人生を取り戻したいジョーは“22番”の協力を得て元の世界に戻ろうとする・・・。この映画は死にたくないと思っている魂と生まれたいとも思っていない魂が出会うことで人生にとって大切なものに気付いていく物語です。
もうむちゃくちゃ傑作です!ここで描かれるのは人生賛歌。生を受けることに興味を持てていなかった22番が、ジョーとひょんなことから人間の世界で冒険をすることにより、ワクワクしたりドキドキしたりと人生の“きらめき”に気付いていきます。その様は忘れていたトキメキを思いださせてくれて、こちらまで何だかパワーを貰えちゃう。でもそういう高揚感やエネルギーを与えてくれる映画ってこれまでもあったと思うんです。
この映画の凄いところは“生きる”ことの素晴らしさ、かけがえのなさを描いた上でさらに先の“死”への不安、恐怖心みたいなものをほどいてくれる作品になっていることだと私は思っています。人は大儀とまで言わなくても、何かを成す為に生きたい、夢を叶えるために生きるぞ、そんな“目的”のために生きることが大切なんだ、と思いがちです。それを達成しないと死ねない!それを成し得ないと生きている意味がない!と。この映画で言えばジャズに魅了され「ジャズでテッペン取っぞー!」とそこを最終地点に置いたジョーのように。
でも何かのために生きることって大事だけど、それが一番な訳じゃない。生きるために目的が必要なんじゃない、そんなの見つけられなくても日々の中で何かに心動かされること、“きらめき”を感じられていればそれで充分なんじゃないかって気付かされるのです。そしてその“きらめき”って決して大仰なものじゃなく、すぐ側にあるもの、普段は見落としているようなものにこそ宿ってる、と。だから「あれをやってない、これを叶えてない」と右往左往する必要なんてないんだと。
人生の折り返し地点を過ぎている私は「あと何回ごはんが食べられるかな?あと何本映画が観られるかな?」と好きなことに日々全力集中で「何かに囚われてるなぁ」と自分でも思うのですが、これって私なりの“死”への不安の表れだと思っています。でもこの映画を観た時にそんな不安をマルっと受け止めてもらった気がしたんです。だって私、普段から“きらめき”をいっぱい浴びて生きてるじゃないか、と。その境地に至った時なんだかとっても心穏やかになり、そんな心境になって「もう私、死んじゃうの?それとも悟りひらいちゃう?」と思った程です・笑
私たちはコロナ禍という未曽有の経験をし、生きることについて誰しもが見つめ直すきっかけを得ました。そんな私たちが誰しも気付いたあることをこの映画ではビビットに描いています。だからこそ、あの時に劇場公開が叶わなかったことが残念でなりませんが、今こうやってスクリーンで上映されていることに喜びしかありません。ディズニー&ピクサーが底力を見せつけた攻めた1本。お見逃しなく!!!です。
By.M
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