『ライオン・キング:ムファサ』
アニメーションや舞台でも知られる『ライオン・キング』は超実写映画版が2019年に公開され大ヒットしました。その物語の前日譚を描くのが今回の作品、12/20(金)公開『ライオン・キング:ムファサ』をご紹介いたします。
息子シンバを守るために命を落としたムファサ王。彼は幼い頃、両親と離れ離れになり孤児となったが王家の血を引くタカ(後のスカー)と出会い、血のつながりを超え兄弟のような絆で結ばれる。が、あることをきっかけに冷酷なホワイトライオン、キロスに命を狙われたことからムファサとタカは群れを離れ楽園と言い伝えられるミレーレをめざす。しかしその過程で二人は運命を分かつことに・・・・
みんな大好き『ライオン・キング』の中で誰からも愛され王に君臨していたムファサとは真逆の絶対的悪として存在していたスカー。彼がどんなことを企てその結果、死を迎えたかはご存知の通りでしょう。でも、そんなスカーも幼い頃から根っからのヒールだった訳ではなかったんです・・・
この映画ではムファサとタカとのそもそもの出会いから、なぜにタカがムファサを憎んでいくのか、また幼き頃タカと呼ばれていたスカーがなぜ、そう呼ばれるようになるのか、“ライオン・キング”という物語の背景をより深掘りしていきます。
タイトルに“ムファサ”がつくので当たり前にムファサが主人公で彼の物語が語られる訳ですが、私的にはタカが闇落ちしスカーになってしまう過程がなんとも言えなかった・・・。『ライオン・キング』だけ観てるとスカーはとにかく憎いヤツ!というだけのイメージだと思うんですが、子供の頃はタカと呼ばれとっても可愛い。父オバシには反対されたもの「兄弟がほしかった!」とおねだりしムファサと共に育つぐらい無邪気。
でもオバシから次の王としてタカに求められるのは概念としての“王”(=男)らしさ。一方ハグレ者としてオバシの愛情は受けられずタカの母親の元、成長していくムファサは自身の個性を伸ばしスキルをどんどん磨いていくんです。できるヤツとして成長していくムファサ、片や父親から「お前は王になる男なんだ!」と無意識な圧を与えられ続け色々拗らせていくタカ。その鬱屈した感情は彼をたやすく闇に引き入れることとなるんです。親としては期待して子にかける言葉もやり方を間違えると呪いになってしまうんですよね。
(こういうテーマ性だから本作の監督に(『ムーンライト』の監督・脚本の)バリー・ジェンキンスが選ばれた気もします)
しかも、できるヤツ・ムファサがそんなタカの気持ちを慮ってとる行動もタカにとっては気持ちを逆なでされる行為となり、どんどんダークサイドへ・・・
「八つ当たりじゃん」と言われるとそれまでだし、彼も改心するチャンスがなかった訳ではないけれど、なんだかちょっと同情しちゃう展開もありました。という訳で本作を観た後だと『ライオン・キング』がまた違った印象になるんじゃないか、という気さえ出てきました。“ムファサを観なければ『ライオン・キング』は完成しない”という宣伝のキャッチコピーがあったのですが、さもありなんです!
日本語版吹替え版と字幕版で上映しているので見比べ、聞き比べ鑑賞もオススメ。本作のヴィラン冷酷な白ライオン、キロスは吹替版に渡辺謙、字幕版にマッツ・ミケルセンと特にゾクソクするキャスティングですよ!シネマイクスピアリ的にはLiLiCoさんが賢い雌キリン役としても登場するのでそちらもポイント♪
今年の映画納め、年明けの映画初めにぜひご覧ください。
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