皆さんこんにちは、女住人Mです。2015年はスパイ映画の豊作イヤーだった訳ですが、年明け公開された1本がまたもや秀逸スパイ映画だったのでした。
今回ご紹介する映画はスティーヴン・スピルバーグ監督作、トム・ハンクス主演、本年度アカデミー賞にも作品賞ほか6部門ノミネートされた『ブリッジ・オブ・スパイ』です。
舞台はアメリカとソ連が冷戦状態にあった1950~60年代、NYで一人の男がソ連のスパイとして逮捕されます。彼の名前はルドルフ・アベル(マーク・ライランス)。告発された彼を裁判で弁護することになったのがジェームズ・ドノヴァン(トム・ハンクス)。敵国の人間を弁護することで世間の批判の目にさらされ危険な目に合いかねない、そんな状況でアベルの弁護を引き受けます。世界が戦争を勃発する危機にあった時、平和の鍵を握っていたのがある一人の弁護士だったという実話に基づいて描かれたのが本作です。
この時代の米ソはまさに一触即発、世界を巻き込んでの核戦争も持さない状況。そんな中、捕えられたスパイ・アベルにアメリカ国内の世論は「処刑だ!」の声だったことは言うまでもありません。それでも敵国のスパイだったとしても、公正な裁判をすることはアメリカが成熟した国であることの証明にもなり、世界的に有利に立てるのではないか、という上司の考えを受け、ドノヴァンは彼を弁護することにするのです。それはドノヴァンの中にも「アメリカの司法が(誰に対しても)平等である」ことを示したいという強い思いがあったから。そういった確固たる思いでドノヴァンは裁判に挑むのですが、もちろん世間からの風当たりは強く、通勤途中で白い目で見られたり、ついには自宅へ銃が発砲されるなどドノヴァンの家族にも危害が及ぶこととなるのです。
それでもドノヴァンは法の秩序を重んじ、弁護士としての信念を曲げないためにアベルを弁護し続けます。一方、アベルもFBIからの厳しい尋問を受けても、情報を渡すことを拒否しこのまま自身がアメリカで死刑宣告を受ける結果になることが容易に想像出来ても祖国を一切売ることはしないのです。それはスパイとしての宿命とは言え、アベルも自身の信念は決して曲げない男だったのです。この相容れない境遇にいる二人ですが、自分の中の正義に忠実な二人はそれぞれの仕事を全うすることで、次第と不思議な絆で結ばれることとなるのです。それは違った出会い方だったら二人は生涯の友となり得たような・・・そんな関係性が全編に渡ってとても印象的に描かれます。
そしてドノヴァンはいつしかソ連でアメリカ人が捕えられることがあるかもしれない、その時にアベルは人質交換としての玉になる、という提案でもって死刑が確実だったアベルを懲役30年の刑へと導くのですがその5年後、ドノヴァンの思った通りの事件が起きることになります・・・・。人質交換が描かれる映画の後半の舞台は鉄のカーテンが敷かれようとしている東ベルリン。ベルリンの壁が建設されるその様子をもサラっと物語に入れこんだり、東西に分断されようとする都市の再現具合もさすがのスピルバーグのビジョンと演出力が光ります。嬉々としてこのシーンを描いているスピルバーグが思い浮かぶくらいに・・・
(映画ファンにはお馴染のコーエン兄弟が脚本に名を連ねていることもあって、ユーモアに溢れたセリフ回や印象に残るセリフがグっときます。)
主人公ドノヴァンを演じるトム・ハンクスの演技は言わずもがな、本作で鮮烈な印象を残す、ロシアのスパイ・アベルを演じるマーク・ライランス(まもなく56才)の演技も必見です。こんな凄い俳優が埋もれていたとは本当、恐ろしいことです。どこにいたんだ!
(今年のアカデミー賞助演男優賞にも納得のノミネート!)
歴史は繰り返される。憎しみと暴力に溢れる現代において、何が必要なのか、過去の歴史に我々は何を学ぶのか、そんなことを映画で伝えようとするスピルバーグもまさに不屈の男(Standing Man)なのかもしれません。スピルバーグ印に溢れる『ブリッジ・オブ・スパイ』は1/8(金)からシネマイクスピアリにて公開です。
By.M
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