インデペンデント系映画の最近のブログ記事

『ゲット・アウト』

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 皆さんこんにちは、女住人Mです。まもなくハロウィン、ハロウィンと言えばホラー系?!ということでこのジャンルで猛烈にオススメする作品の公開が続くので、2週に渡ってご紹介いたします。今回は10/27(金)公開『ゲット・アウト』です。
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 主人公はNYで暮らすアフリカ系アメリカ人写真家のクリス(ダニエル・カルーヤ)、白人の可愛い彼女ローズ(アリソン・ウィリアムズ)がいるイケてる彼。週末に彼女の実家に招待され、自身が黒人であることを心配しながら、ローズの両親と初対面。実際には大歓迎され、ホッとしたのも束の間、「何だかおかしい」出来事がいくつもいくつも起こり、じわじわと"恐怖"が彼を襲うことになるのです・・・・
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 本作は今年2月に全米で公開されると低予算映画ながら初登場No.1を記録し、その後8週連続TOP10入り、全世界的にも大ヒットを記録し、今年上半期に最も話題をさらった映画と言っても過言ではありません。その大ヒットの要因を考えるに作品自体のオリジナリティ性にあるんじゃないか、と踏んでいます。"彼氏を初めて両親に紹介"というシチュエーションだけ考えても「どこの馬の骨ともわからんやつに俺の娘がやれるか」問題というお決まりの展開、プラス違う人種同士問題も加われば余計にややこしいことが起こりそうだな~、と想像はできます。
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なのできっとこの映画もボーイフレンドを両親に紹介したことから浮き彫りになる人種差別をテーマにした映画か、と観ていると、物語はちょっと違った方向へ進んでいきます。なぜならローズの両親はクリスを心からウェルカム!なのだから・・。
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それでも、どうもローズの家は何だか変。「黒人に偏見はない」と語るローズの両親は確かにそうなんだろうけど、フレンドリー過ぎるし、そんな発言をする割に雇っている庭の管理人も家政婦も黒人ばかり。しかもこの人たちの言動が全て変・・・「何だかおかしい」が積み重なるにつれて、ついにクリスはある衝撃的事実を知ってしまうのです。「こいつらむちゃくちゃおかしい!!!」と。
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もうそれが明るみになった時は「そう、きたかぁぁぁぁーーーーー」と声をあげたくなること必至な展開!!!!この衝撃、ちょっと毛色は違うのですが、去年の冬公開し、シネマイクスピアリでも大大ヒットをした『ドント・ブリーズ』(:お屋敷に泥棒に入ったら出くわした住人のじいちゃんがトンデモだった!的ホラー映画)を彷彿させる感じなんです。クリスが「こいつらマジかっ!」と気付いて以降は「ドンド・ブリーズ」同様、観客の想像を越える展開にきっと震えることでしょう。と、同時にその話の持って行き方の絶妙さに、ニヤリとしたくなるハズ!確かにテーマは"人種差別"ではあるのですが、思ったのとは別の方向からそのテーマを深堀りしてくるんです。
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(クリスの相談相手、親友ロッドが最高!本作はバディ(相棒)映画としても秀逸です。)

 本作の監督・脚本・製作はコメディアンでもあるジョーダン・ピール。コメディで培ったそのセンスが本作の中でもいい塩梅に加わり、恐怖の中に絶妙な笑いがやってくる。ここまで読んで頂き本作にもし興味を持っていただけたなら、予告編も何ならポスターもチラシもチラ見程度で本編をご覧になることをおススメします!そしてエンディングを知った時に「きっとあっちヴァージョンもあったんじゃないかな」と想像するハズ。はい、それ正解です!

By.M
©UNIVERSAL STUDIOS ALL Rights Resered.

 皆さん、こんにちは女住人Mです。夏休みも終わり、単館系、公開劇場が少ない系の良作映画が続々とシネマイクスピアリで公開されています。今回は都内では既に大ヒット上映中、お客様からのリクエストも多かった『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』(9/9(土)2週間限定上映)をご紹介します。
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 タイトルからわかる通り、本作はバレエダンサー、セルゲイ・ポルーニンのドキュメンタリー映画。端正な容姿と類まれなる表現力で世界中のバレエファンを魅了し、英国ロイヤル・バレエ団の史上最年少プリンシパルになるも、2年後の人気絶頂時に電撃退団・・・。そんな彼のこれまでの人生を余すこと映しだし、その素顔に迫ります。
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 バレエ界きっての異端児として今も注目を浴びている彼。最近ポルーニンの来日公演詐欺という残念な事件も起こりましたが、裏を返せば人気の証とも言えましょう。でも私自身、この映画が公開されるまでポルーニンの存在を全く知らなかった・・・。彼はグラミー賞にもノミネートされたホージアのヒット曲「Take me to church」を使い踊ったMVがYou Yubeで1800万回以上アクセスされ、世界中で注目を浴びることとなった、と聞いていますが、お恥ずかしながらそれも知らなかった・・・。そんなバレエ音痴な私が観ても、グイグイ心引き込まれたのが本作でした。
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 セルゲイはウクライナの貧しい町の出身。9歳でバレエ学校に入学するも、その学費を捻出するために、父はポルトガル、祖母はギリシャと出稼ぎにいくことになり、家族はバラバラになってしまいます。それでも少年セルゲイくんは自分のために家族がこんなにまでしてくれる、という思いと何よりもバレエへの愛を胸に誰よりも必死に学び、13歳で英国ロイヤルバレエスクールに入学、単身ロンドンに行き、増々その才能は開花、19歳でロイヤル・バレエ団の史上最年少男性プリンシパルに上りつめるのです。
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その過程の多くを子供の頃から撮影されていたビデオカメラの映像で私たちは知るのですが、とても貧しかった家庭にカメラがあったことが珍しいのだと思いますが、そこに誰よりもセルゲイの才能を信じていた母の想いを感じとることも出来ます。
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バレエ学校で学び、どんどんスキルをあげていくセルゲイのバレエは素人目に見ても素晴らしさがわかる程。練習風景1つ見ても、彼一人が抜きんでているのも一目瞭然なのです。そして様々な公演で舞う彼は本当に美しく、ダイナミックでまさに"優雅な野獣"なのですが、その一方で胸を締め付けられるような息苦しさも感じてしまうのです。それは常に家族のこと、家族と一緒にいることを一番に望んでいたセルゲイなのに結果、自分がバレエをすることで、家族が離ればなれになっている事実に悲しみ、苦しんでいるから、そう思えてなりません。
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子供の頃から「バレエで家族を1つにするんだ」と言っていたのに、両親の離婚が彼の全ての決定打となっていき、それが呪縛のごとく彼を締めつけていきます。バレエを踊ることが天命であるかのような存在なのに、大好きなもので大好きな人たちが傷つき、自分も傷つけられていく。その矛盾にたった一人で向き合わざるをえないセルゲイの孤独は想像を絶するものがありました。
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それでも結局、人は好きなもの、好きなことで救われていきます。それと出会えたことを幸せと細やかでも感じられることで立ち直っていくことが出来ます。孤独のどん底にいた時に彼を助けたのが何だったのか・・・。それがこれからの彼をずっと支えていくのだと思います。そしてこのドキュメンタリー映画を観た後、きっと誰もがこう思うのです。ダンサー、セルゲイ・ポルーニンの今のダンスを観てみたい、と。

By.M
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 皆さんこんにちは、女住人Mです。ここ数年、世の中は空前の猫ブームなようで、私の周りにも飼っているにゃんこについてそれは愛おしく語る人々多数。そんなブームにあやかる訳ではありませんが、にゃんことの出会いで人生をやりなおしていく青年の姿を温かく描く9/1(金)公開『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』をご紹介します。
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 ジェームズ(ルーク・トレッダウェイ)はホームレスで薬物依存症の青年。親からも見放され、ストリートミュージシャンをしながらその日暮らしの生活を続けていた時に野良猫と出会います。"ボブ"と名付けられた茶トラの猫はその日からジェームズと一緒に生活をしていきます。

本作は本国イギリスを始め世界中でベストセラーになっているジェームズさんの自伝「ボブという名のストリート・キャット」の映画化。本作のロンドンプレミアに参加したキャサリン妃も絶賛の1本です。しかも劇中ボブを演じているのは本物のボブ。高齢のため、逃げたり、走ったりする動きの多いシーンは7匹のプロ!?猫がそれぞれ演じたそうですが、多くはリアル・ボブが演じているところも見所の1つ。
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喉を鳴らすゴロゴロという声がスピーカーから響き渡り、ボブ目線のロンドンの日常、ジェームズの肩やギターに鎮座するボブとどのシーンを観ても岩合さんの「世界ネコ歩き」にも負けない愛らしさでにゃんこ好きの方は勿論、そうでない方の心もガッシリ猫つかみは間違いありません。
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そしてどんな人の心も捕えてしまうボブの魅力が余すことなく描かれているだけでなく、ボブが寄りそうことになるジェームズの人生模様がまた沁みます・・・。ジェームズは心に傷を負ったことで薬物依存症になっています。ダメなことは重々承知しているので、更生プログラムを実践しドラッグを絶ち、何とか社会復帰をしようと思っています。更生担当者ヴァル(海外ドラマシリーズ「ダウントン・アビー」のアンナでお馴染みジョアンヌ・フドガット)に「もう次はないから、本当に更生を約束して」と叱咤され住居を都合してもらいます。
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どんな理由があれ、心の弱さから薬物に手を出してしまうことは肯定出来るものではありませんが、過ちを犯したことを悔いている人、そこから抜け出したいと願う人に心から寄り添う存在がコミュニティーとして機能しているというのは健全です。ジェームズは「今度こそ。」と決意した時にボブに出会います。どうも捨て猫らしく、おまけに怪我をおったボブはまるで自分と同じ存在に見えたのかもしれません。自分が生活するのもやっとですが、自分のことは後回しにして面倒をみます。最初はこの子を助けなきゃ、この子には僕がいないと・・・という気持ちだったと思いますが、そんな感情が彼の心を変えていく様が何ともほんわかします。
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そう、例え言葉が通じなくても、愛情を与えることが、与えられることにもなるし、助けることが、助けられることってありますもんね。ただそこにいてくれるだけで良い、そう思える存在があることで人はとても強くなれるものです。そしてボブへ愛情を注ぐことで、人に対しても閉ざしていた心が溶けていったのかもしれません。これまではなかなか思う通りに進まなかった人生もボブと出会ったことで彼の中の何かが変わり、彼の人生そのものすら変えていくようになるのでした。
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(劇中、リアル・ジェームズさんもチラリと登場!)

人生一人で生きているように思っても、誰かの存在なしでは生きていけないものです・・そんな人生の相棒にボブみたいなにゃんこがいてくれるなら、この上ない幸せですね。

 因みにジェームズさん、自分と同じように挫折した人がまたチャンスを手に出来るよう、本の売り上げなどの多くは慈善団体に寄付し、現在もチャリティ活動に力を入れ、ジェームズの恩返し的人生を歩んでいらっしゃるとの事。え~話や。

By.M
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『ありがとう、トニ・エルドマン』

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 皆さん、こんにちは、女住人Mです。今週末からいよいよ夏興行の始まりです。夏休みに向け大作やファミリー映画が続々公開されるこの時期。っと、その前にどうしてもご紹介しておきたい作品が・・・6/24(土)公開『ありがとう、トニ・エルドマン』です。
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 親元を離れ生活しコンサル会社に勤める独身女性イネス(ザンドラ・ヒューラー)。仕事人間の彼女には悪ふざけとジョークが大好きな父・ヴィンフリート(ペーター・ジモニシェック)がいます。父は愛犬の死をきっかけに娘が働くブカレストにやってくるも、そんな彼が鬱陶しいイネスはぞんざいに扱ってさっさと追い返してしまう。が、ホッとしたのも束の間、モサモサのカツラ、出っ歯の入れ歯をした父が"トニ・エルドマン"と名乗って再びイネスの前に登場します。本作は世界各国の映画賞に輝き、有力誌で2016年ベスト1を総ナメにした父と娘の物語です。
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(「こんにちは、私がトニ・エルドマンです。」)

 さて突然ですが皆さん、お父さんとの関係性ってどうですか?小さい頃は「パパ、パパ」と言っていた娘もいつの間にか「お父さんキモイ!下着一緒に洗うとかキモイ!」と言い出し、おうちで肩身の狭い存在になっている・・・というのはよく聞くお話。私の周りも7割ぐらいは父と疎遠、もしくはあまり接点なしと言っている友が多いのですが、私の場合は小さい頃からお父さん子で、すこぶる良好な関係を保っていました。とは言え、一緒に生活した時間より離れて暮らす時間が遥かに長くなってしまうと、たまに会って話しかけられるだけで何だか不機嫌になってしまう。嫌いじゃない、嫌いじゃないけどほっといて~、となる。
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でもってこの映画です。私はイネスが自分に見えてしょうがない。ちょっと陽気にジョークを言う父、これが友達のお父さんだったりすると「楽しくていいじゃん、可愛いじゃん」となるけれど、自分の親だとイライラ。ちょっと心配されようものなら「ちゃんとやっているから」とイライラ。いやわかってるんです、お父さんは無条件に心から心配してくれていることも。それが充分わかっていても、甘えからの八つ当たり。それも娘の自分なら許されると思っているおごり。映画の中でも冷たい行動を取ったあげく、父をベランダから見送り、トボトボ帰る後ろ姿を見て、涙ぐむイネスに「どっちやねん」となりますが帰省の度にこれと全く同じ行動をしている自分がいる。悪い、悪いと思っていても心は裏腹、一人になってやっと素直になっても遅いのに・・・
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 と、父娘の微妙な距離を描く物語、ここまでだったら、よくある話ですがこの映画の本領発揮はここから。「もうお父さんが急に来てね、いい迷惑よ」なんて友達と話していたら後ろに立っている、で「私はトニ・エルドマンです。」と名乗って友達と談笑し、和気あいあい。「何やってんのよ!」とお父さんを責めるも、娘が心配でならないお父さんも引かない。お得意の悪ふざけを交えて、イネスの気持ちをほぐそうと、どんどん日常に浸食し、却って彼女のイライラは積み重なっていくのです。
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でもイネスも気付き始めるのです。自分の存在や居場所に執着し過ぎて周りが全く見えなくなっていることも。そんな執着を守りたいがために大切なことを見失っていることも。そして大切なことが一体何なのかすら、わからなくなっていることも。だからこそ自由に生きている(と見える)父を見て、余計に腹立たしくなっていることも・・・・
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(一人暮らしの女の悲哀溢れる、このシーン!)

 そんなどん詰まりのイネスだったのですが、ついに感情のビッグバンを迎えることになります。あんなに自分の気持ちを殺して本当のことから目を背けていた彼女がまさに"裸"の心をむき出しにする展開が!唖然!愕然!?爆笑!なのに泣ける、泣けてしょうがない・・。ちょっと奇想天外な父娘の物語ではあるのですが、映画を観終わった後は何とも言えない温かい余韻がイネスと共にむき出しになった皆さんの心も包み込んでくれると思います。
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 本作はドイツ=オーストリア映画。馴染みの薄い遠い国のお話に思えますが、父娘の関係はこんなにも世界共通なのか、ということに驚愕しつつ、自分に似た仲間が見付けられた気がしてちょっと嬉しくもなったり・・・いや、そんなことより、今後はちゃんと素直にならなきゃですね。気付かせてくれて、本当に「ありがとう、トニ・エルドマン」!

By.M
© Komplizen Film

『20センチュリー・ウーマン』

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 皆さんこんにちは、女住人Mです。
今回は本年度のアカデミー賞脚本賞にもノミネートされた6/3(土)公開『20センチュリー・ウーマン』をご紹介いたします。
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 舞台は1979年サンタバーバラ。55才のドロシア(アネット・ベニング)はシングル&ワーキングマザー。目下の悩みは15才のティーンエイジャー、一人息子ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)のこと。何かと難しいお年頃の彼が心配で、息子の人生の指南役にと二人の女性に相談を持ちかけます。
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 本作の監督はマイク・ミルズ。前作「人生はビギナーズ」(こちらもオススメ!!)では75才でゲイであることをカミングアウトした自らの父親をモデルに描き、今回は自身の母をテーマにした映画を作りました。彼自身がもともと映像作家/グラフィックデザイナー(X-GirlのロゴやGAPのCMやソニック・ユースほかのアルバムのジャケットなどなど)として活躍した後に映画監督になっている、そんな経歴もあって彼の作品は映像も音楽もとにかくおしゃれ~、というのが第一印象。

と、なると「オシャレピーポーの映画はちょっといけすかない」となるものですが、ミルズ監督の映画は親密な空気が流れていて、どこか温もりを感じさせてくれる・・・。まるで友達が大切にしているアルバムを見せて貰っているような感覚になります。それは彼が繊細な部分を差し出して映画を作ってくれるから、そんな気もしています。
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(劇中の衣装がミルズ監督のお母さんの形見の品や監督の私物だったり、そんなところも彼のテイストが随所で輝いています)

さて、ドロシアが多感なお年頃のジェイミーについて相談を持ちかけるのは自分の家に間借りしている写真家のアビー(グレタ・ガーウィグ)とジェイミーの幼馴染ジュリー(エル・ファニング)。アビーはデビッド・ボウイに触発されて髪を赤に染めた、生き方そのものもパンクな女性なのですが、最近病気を患いちょっと落ち込み気味。一方ジュリーもジェイミーよりはちょっと年上だけれど、この年にありがちな"若い自分"という存在自体を持てあまし、不安定。そんな危うい感じの二人に相談して大丈夫か?という感もありますが、肉親では決して教えない、彼女らなりの一生懸命のアドバイスをジェイミーにするのです。
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(本作におけるエル・ファニングは可愛すぎて、非常にけしからんレベルです!)

それが思春期のジェイミーには苛立ちの種になったりで却って母息子の関係性がギスギスしたり、その苛立ちをぶつけるように、アビーと夜に出かけてお酒を飲んだり、女性の口説き方を教わったり、ジュリーとセックスについて語ったりと、ドロシアが思っていた以上の展開に・・・。でも、よく男性監督が女性を描くと変に神秘化された「こんな女神いませんから」みたいな女性が出てきがちですが、そこはジェイミー同様、母親と2人の姉に囲まれて育ったミルズ監督だからこそ、等身大の女性が描かれていて、頷けるキラーコメント(セリフ)も続出なのです。
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とは言え「これは行き過ぎだわ、まずいわ!」と思ったドロシアは同じく部屋を貸していたウィリアム(ビリー・クラダップ)に助言を求めるのですが彼自身もどこか不安定な存在で・・・つまり、登場人物が誰もが危なっかしくて、もしかしたらジェイミーが一番まともな青年な気もしなくはない。そんな感じではあるのですが、思春期というセンシティブで、かついろんなことを素直に吸収出来るお年頃に、こんな大人たちに囲まれて育つジェイミーはすご~く素敵な大人になるんじゃないか、と思えるのでした。
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1970年代という時代性も描かれ、当時のファッションや音楽といったカルチャー全般も楽しめるし、映像もとても素敵で確かにシャレオツ度は高いのですが、この映画そのものとどこか親密な関係性が築けるような、そんな1本になっていますYO!

★マイク・ミルズ監督来日記念、トークショーの模様もお届け★
 再び、パーソナルなテーマで映画を作ったことに関してマイク・ミルズ監督は「最初からそういうものを作ろうとは思っていなかったんだ。僕はシャイだから自分のことを映画にするなんて考えてはいなかったよ」とコメント。
前作の「人生はビギナーズ」でお父さんのことを描いている途中にお母さんもとても素敵な人だったな、と再認識したミルズ監督は(彼女をモデルにして)自身も大好きなウディ・アレン、フェデリコ・フェリーニのような映画が作れるんじゃないかな、と思ったそうです。
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「パーソナルな部分を公なものに変え、自分だけのものをみんなに共有する作業は、自分の大切なものが遠くに行ってしまう感覚にもなる。でも、撮影が始まるとそこには家族のような仲間たちがいて夢が叶うような楽しい日々だったよ」とミルズ監督。
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 また、本作の公開を記念して映画コメンテーターのLiLiCoさんとライターのよしひろまさみちさんのトークショーも開催されました。
LiLiCoさんはアネット・ベニングが演じた母親のドロシアについて「感性、センス、オープンマインドなところが素敵!こういう家族がうらやましいわ。」とコメント。
よしひろさんも「この映画は見る人によって思い入れが違うだろうし、親を亡くしていると特に感じることがありますよね。」とコメントし「子どもにとって母親は"お母さん"というのは職業のようなものだけど、当然、母親も一人の女性なんですよね。女性としての母をもっと理解してあげたかったなぁ」とLiLiCoさん。
この映画を観ると母親の別の一面も知りたくなるのでお母さんと一緒にご覧になるのも良いかもしれませんね♪
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By.M
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『カフェ・ソサエティ』

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 皆さんこんにちは、女住人Mです。今回は今もなおハイペースで映画を作り続ける超人ウディ・アレン(今年82歳!)の最新作5/5(金)公開の『カフェ・ソサエティ』をご紹介します。
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 舞台は1930年代、主人公のボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)は刺激的な日常を求めて映画業界の大物エージェントの叔父フィル(スティーブ・カレル)を頼ってニューヨークからロサンゼルスにやってきます。雑用係として仕事を始めたボビーですが、秘書のヴォニーことヴェロニカ(クリステン・スチュアート)にたちまち一目ぼれ、アタックするも彼女は道ならぬ恋に落ちていたのです。傷心のまま結局ニューヨークに戻ったボビーは兄のナイトクラブで働き成功、美しい女性(ブライク・ライブリー)と出会う・・・これまた彼女の名前もヴェロニカなのでした。
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 ウディ・アレンの作品と言えば、ファニーでロマンティック、時にシニカルだけど切なさがふっと訪れて、と人生の酸いも甘いも描いてくれる・・さすが人生を長く豊かに経験し、映画に生き、恋に生きたマスターの教えは!といった印象があります。「人生ってこんなもんだと僕は感じているけどね・・」と映画を通じて語られるウディ節は年を取れば取る程ダイレクトに胸に沁みて、若い頃よりどんどん彼の作品がしっくりくるのは大人になった自分へのご褒美なような気もしています。で、今回はひとりの男と二人のヴェロニカが織りなす物語。
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本作でもボビー演じるジェシー・アイゼンバーグがウディさながらにマシンガントークを繰り広げ(って、この人はもとからそういうタイプではありますが・w)、ブラックなユーモアで笑わせたり、はたまた30年代のゴージャスな世界観にうっとりさせてくれたり、と思ったら黄昏時のような寄る辺ない気持ちにもさせてくれたりと、ここに来てまたもやウディ映画の傑作が誕生しました。
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 この映画で個人的にグっときたポイントは "進める道は1つ"であることの描かれ方。ボビーは成功を夢見て、ロサンゼルスに行ったり、夢破れてニューヨークに戻ったり、はたまたヴォニーに恋したり、恋破れてヴェロニカと結ばれることになったりと、彼の人生には違った生き方もあったかも・・・というのがいくつか提示されます。
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でもこれはボビーだけのことでなく、人は誰しも日々どんな些細なことでも多くある選択の中から一つを選んで行動していて、それに満足しようが後悔があろうが「あの時こっちを選んでいれば」といった思いを必ずするものです。だって人生は1つしか選べないから。なのでどうしたって「あっちもあったな」と想いを馳せてみては堂々巡りになっちゃいます。
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 そしてこの映画が語られる時に大ヒット上映中の映画「ラ・ラ・ランド」みたい、という感想を持つ方がとても多いのはどちらの映画も「あったかもしれない人生」について描かれるから。「ラ・ラ・ランド」の描き方はファンタジーでドリーミングなあの映画にふさわしい表現でしたが、さすが82歳のウディが描くそれはまた一味違った、独特の余韻を私たちに残してくれます。それは結局"夢は夢"であること。あったかもしれない夢のようなことは考えてもしょうがないという諦めを感じさせられながらも、その一方で"そんな夢を見続けられるって素敵じゃないか"の両方を私たちに差し出してくれる。これが何とも言えずほろ苦いけれど温かい・・・。
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 人生の選択はたくさんあるようですが人は誰もが1つしか選べない、そして選んでいるようだけどそれは決まっているものと考える人もいるでしょうし、選んでいるのではなくただそうなっているだけ、と思う人もいるでしょう。"進める道が1つ"しかない私たちはそれに囚われ過ぎても損だけど、今ここにない人生を思い続ける、そう思わされる出来事があることが人生の彩りになる、「それも悪くない・・・」と映画を観終わってとても優しい気持ちになれるのでした。

★『カフェ・ソサエティ』公開記念メニューのお知らせ★
本作の公開を記念して、イクスピアリ4Fシガー&バー「トルセドール」では劇中の登場人物をイメージした4種のカクテルが、イクスピアリ3Fイタリアンレストラン「ピッタ ゼロゼロ」では映画の世界を皿上で表現した特別なデザートプレートが登場。
お会計時に映画『カフェ・ソサエティ』のチケットを提示するとさらにお得な特典も!
映画とあわせてお楽しみください♪

「トルセドール」のウェブサイトはこちら
「ピッタ ゼロゼロ」のウェブサイトは こちら

By.M
Photo by Sabrina Lantos © 2016 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.

『ムーンライト』

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 皆さんこんにちは、女住人Mです。今回ご紹介する映画は本年度のアカデミー賞作品賞・脚色賞・助演男優賞受賞作、3/31公開『ムーンライト』です。そんな冠がありながらも本作をまだご覧になっていない方もいらっしゃると思います。私の周りでも「重たい内容っぽいな~」「社会派っぽいやつでしょう?」と言った印象で敬遠している声を聞きます。でも私がこの映画を観終わって最初に口に出た感想は「いや~ん、ロマンチックや~ん。(うっとり)」でした。
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 マイアミの危険なエリアに生まれたシャロンが物語の主人公。彼の少年時代(アレックス・ヒバート)、思春期(アシュトン・サンダース)、成人(トレヴァンテ・ローズ)になるまでを3部構成で描き、3人の役者がそれぞれのシャロンを演じます。

リトルとあだ名をつけられた少年時代のシャロンはその名の通り、ちびっこ、内気な性格で学校でもいじめにあっています。家に帰っても麻薬に溺れている母親(ナオミ・ハリス)が知らない男の人を家にあげていて、どこにも居場所がありません。そんな彼がある時、ドラッグの売人ファン(マハーシャラ・アリ)と出会い、彼が唯一の心開ける存在になります。父親のいないシャロンにとってはまさに父親代わり、シャロンはずっと一人ぼっちの辛い現実を過ごしていましたが、ファンと出会い心の拠り所を得ます。
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そして学校でも幼馴染のケヴィンが唯一そういう存在として彼の側にいてくれるようになります。でもシャロンの生活は好転することはなく、思春期になっても「お前、オカマみたいだな」と罵られイジメは続き、生き辛い現実に変化はあまりありません。
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ある夜、シャロンはケヴィンと浜辺で一緒に過ごしたことでお互いの存在が特別なものになりますが、悲劇的な出来事が起きたことを機に、二人の関係性も人生も行き違いそれ以降、離ればなれに・・・。時は流れ大人になったシャロンはリトルと呼ばれていた面影がないくらいに屈強な成人へと変貌し、ファンと同じドラッグの売人という人生を歩んでいた、そんなある日、シャロンの元にかかってきたケヴィン(アンドレ・ホーランド)からの1本の電話がまた彼の人生を変えていきます。

 本作の登場人物はほぼ黒人、イジメ、貧困、LGBTといった様々なマイノリティの苦しみを描いているので確かに冒頭触れたようにある特定の人のそれを描いた特殊なものと思われるかもしれません。でもこの映画がフォーカスするのは共同体の中に属しているシャロンの疎外感です。誰かが誰かを差別すること、孤独を感じることはどんな境遇にあっても経験し得ることです。
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ファンはシャロンに「自分の人生は周りに決めさせるな」と教えますが、その人を何かの枠にはめたがるのは他人だし、他人は誰かをカテゴライズすることで差別をするから、自分で決めろと言ったのかもしれません。黒人であること、男性であること、そういったことで社会が個人に求めること、枠にはめたがることはとても多く、それは人種、性別が変わっても同じです。なので自分は一人であることを感じている(感じたことがある)人にとってはこの映画がとても私的な物語となっていくのです。
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(シャロンを大切に想う人は誰もが料理を彼に振る舞ったり、食べさせます。映画における料理シーンは登場人物たちの関係性や感情を物語る大切なファクターです)

 そして孤独を感じていても誰かたった一人でも心を解放出来る人、無条件に気持ちを渡せる人がいれば人は生きることが出来ます。それがシャロンにとってのファンでありケヴィンだったのです。ファンとケヴィンの不在によって心を閉ざして大人になったシャロンは憧れのファンのような生き方と風貌をなぞり周りを寄せ付けません。でも疎遠になっていたケヴィンからの1本の電話で、彼の中の何かがまた呼吸をし始めるのです。
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ダイナーのシェフになったケヴィンは「お前に似た人をこの店で見かけて思い出したんだ」と昔と変わらない距離でシャロンを迎えます。子供の頃と全く違う風貌になったシャロンですが、そのうつむき加減の眼差しは変わりません。言えなかった言葉はたくさんあっても二人が交わす目線のやり取りは会えなかった時間を埋め、雄弁に想いを語るのです。

そしてケヴィンはシャロンに食べさせようと料理を振る舞います。私は人生でこんなに官能的な料理を見たことがありませんでした。それが私のこの映画を観終わった時の感想「いや~ん、ロマンチックや~ん」に繋がっていくのです。大切な人へ料理を振る舞う行為がこれまで観たどんなラブシーンよりエロかった・・・。
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小さい頃から自分の殻に閉じこもって生きていた少年がたった一人の人と出会うことで自分が自分であることを許していく、これはまさに"愛"の物語なのです。

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Ⓒ2016 A24 Distribution, LLC

『ブルーに生まれついて』

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 みなさんこんにちは、女住人Mです。あっと言う間に師走になり、街はクリスマスな雰囲気で浮かれ気味・・・な一方、北風が身に沁みるおセンチな季節でもあります。12月はハッピーよりもメローを感じるあなたにオススメ、11/26(土)公開『ブルーに生まれついて』をご紹介します。
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 本作の主人公は黒人アーティストが主流の1950年代モダン・ジャズ界において、甘いマスクとソフトな声、哀愁たっぷりなトランペットの音色でもってファンを熱狂させていたミュージシャン、チェット・ベイカー。彼の転落と苦悩、そしてある女性との出会いをきっかけに新しい人生を模索する姿を切なく描きます。

 と書くと「ジャズとか聞かないしな~」「チェット・ベイカー、知らないしな。」という方もいらっしゃるかもしれませんが、私も映画を観るまで「マイ・ファニー・バレンタインは知っているかも。トランペットの人だよね。」ぐらいの知識だったにも関わらず、既に2回も観てラストは涙し、チェット・ベイカーの曲がipodに入っているぐらいですから、ご安心を!
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ジャズ初心者な私がなぜこんなにも心奪われてしまったのか・・・それはもうチェット・ベイカーを演じたイーサン・ホークのハマり具合がたまらない!これが一番です。イーサンと言えばどこかトホホな役、大人になりきれない甘ちゃんな役、神経質で脆い、そういう役を演じると本当に光るタイプで、実生活でユマ・サーマンと結婚しながら浮気で離婚という実績からも、ダメ男なイメージがあります。(けなしてません!)それでもなんか憎めなくって、どこか漂うその未熟さオーラ込みで彼の魅力なんです。(ほら、褒めてます!)

チェットは才能がありながらもドラッグに溺れ、代金未払いで売人にボコボコにされ、顎を砕かれ、前歯を折られ、トランペッターにとって致命的な怪我をして、再起不能になります。そんなダメダメな彼を「もうほっとけないわ」と登場する恋人に慰められ、献身的に支えてもらい復活を夢見る。こういう役どころはイーサンにぴったり過ぎる訳です。
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イーサン自身、「6才のボクが、大人になるまで」他でタッグを組んでいるリチャード・リンクレーター監督と以前からチェット・ベイカーの映画を作ろうとしていたぐらい、彼に魅了されていたようで、この役の前にみっちりトランペットのトレーニングを受け、その意気込みもバッチリ!加えて劇中歌う「マイ・ファニー・バレンタイン」は、イーサン扮するチェットの色気が駄々漏れでイーサン史上、こんなにSEXYな彼を私は見たことがありません。このシーン、女性陣なんかはクラクラしちゃうと思いますYO!
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 チェットはドラッグでトランペッターとしての人生を終わらせてしまうかと思いきや、自分にはトランペットしかないという気持ちや音楽に対する純粋なまでの愛、そして恋人の支えで奇跡的なカムバックの機会を得ます。でもここが正念場、という時にチェットはまた選んではいけない道の方へ、引っ張られていくのです。彼の弱さと言われればそれまでですが、それを選ぶことでしか生きられないと感じている彼の闇、彼の絶望的な悲しみがどこか哀愁たっぷりで、そういう想いを抱えているからこそ、彼だけの音楽が生まれる、そんな風にも思えます。
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 イーサンはこう語ります。「薬物は"悪"だ。そんなのは当たり前だ。僕が表現したかったのは"悪"の仮面の下に隠された人間の姿だ」と。あんなにも破滅的でどうしようもない男なのにその仮面の下にある彼の憂い・・・もうたまりません。そもそも「イーサン・ホーク、知らんがな」という方々にも、彼が演じるチェットの魅力でこの映画の虜になることをお約束します!


By.M
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 皆さんこんにちは、女住人Mです。今回は11/19(土)公開『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』をご紹介いたします。

 小説というのはそれを書いた小説家だけに注目が集まりがちですが、彼らの才能があればそれだけで良い訳ではなく、その著作物が広く、多くの読者に読んでもらえるよう助言し編集し、時に作家を陰ながら支える"編集者"の存在も重要です。そして本作の主人公マックスウェル・パーキンズはまさにアメリカ文学史になくてはならない存在だったと言われています。
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 舞台は1920年代のニューヨーク。第一次世界大戦が終わり、野球、映画、ジャズといった大衆文化が広まり<ジャズ・エイジ>と呼ばれたこの時代。そこで活躍したのが「グレート・ギャツビー」のF・スコット・フィッツジェラルド、「老人と海」のヘミング・ウェイといった作家たちでした。そして彼らは共通するある伝説的な編集者によって才能を見い出され、世に出ています。それがコリン・ファース演じる編集者マックスウェル・パーキンズ。本作は彼が"天才"と惚れこんで支えた若手作家トマス・ウルフ(ジュード・ロウ)との交流に焦点を当てて描いた物語です。
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 トマス・ウルフはパーキンズと出会い、彼の元で手掛けた処女作「天使よ故郷を見よ」が評価され、一躍ベストセラー作家になっています。とは言え、ウルフの著作は日本では絶版になっていて、中古本もかなりの高値。そのため、フィッツジェラルドほかパーキンズがこの時代に世に送り出した作家たちと比べると知名度は低いというとても残念な状況があります。でも映画の冒頭、パーキンズの元に持ち込まれたウルフの分厚い手書き原稿を彼が一度読み始めるや否や、時間も忘れ没頭し、ついに読了した時のその表情たるや。二人が出会ってこれからどんな化学反応が起きていくのか、1つの才能という名の原石を見付けたパーキンズの高揚がこちらにも伝わり、その予感だけでゾクゾクします。

ウルフ自身、実際は2mもの長身の大男でその体格が表わすようにとても熱量の高い作家だったそう。本作の中でも内面から溢れるものをとにかくペンを通してぶつけないと気が済まないウルフの様が描かれていて、そんな彼が思いのまま感情をぶつけ過ぎて、若干収拾がつかなくなっている原稿をパーキンズが大胆にカットしたり、うまくまとめることでより洗練されたフレーズに変えていくシーンはパーキンズがまるで原稿に魔法をかけているかのよう。小説を書くことは単にウルフの個人的な作業なだけでなく、パーキンズという編集者との共同作業であったことも伝わり、パーキンズなしではウルフは存在しなかったかも、とさえ思わされます。
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(「本来は大男のウルフをパーキンズ演じるコリン・ファースと背格好が似たジュードが演じているが、これにより二人の関係性が対等であるようにもとれ、そう考えるとこのキャスティングはあり。」と論したのは本作の字幕協力者でありアメリカ文学研究者の柴田元幸さん。納得!)

パーキンズ自身は決して表舞台には出ないけれど、ウルフが小説にかける想いやパッションを一番良い形で世に出そう、という信念の元に行動する様は如何に彼がウルフの才能を信じ、ひいては文学そのものに惹かれ、どれだけ人生を捧げていたかも伝わります。それ故、時にパーキンズは自分のプライベートはないがしろになり、家族よりウルフの小説を第一優先にしてしまうことも・・・。編集者としては作家の気持ちを汲み、正しい判断が出来たパーキンズもこと家庭のことになると、全くもって省みることができなかった、というのは何とも切なくもあるのでした。
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 さて本作では文学に、信じた才能に全てを捧げたクールで知的なパーキンズ、方や才能を豪快にぶつけるウルフと対照的な人物が登場しますが、それぞれをコリン・ファースとジュード・ロウが演じたことでより魅力的な作品となりました。パーキンズのトレードマークと言われたソフト帽、仕立ての良いスーツとロングコートを纏うコリン・ファースはスクリーンで佇んでいるだけでうっとりですし、ヤンチャだけどどこか繊細で矛盾さをはらんだウルフをジュード・ロウが演じ、あの笑顔を振りまかれた日にゃ、なんか色々許しちゃいますよね。

 この映画を観終わると原題が「GENIUS」(天才と共に守り神の意味を持つ)というのもとても府に落ちる1本ですし、これまでとちょっと違った気持で本と向き合えるようになるかもしれません。本好きな方、そしてスーツ紳士好きな方に特にオススメです♪

By.M
(C)GENIUS FILM PRODUCTIONS LIMITTED2015. ALL RIGHT RESERVED.

『この世界の片隅に』

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 皆さんこんにちは、女住人Mです。今年は「君の名は。」の大ヒットでアニメ映画がいつになく注目されている年ですが、今回ご紹介する作品も今年を代表する1本と言って過言ではないと思います。
今年のベストとオススメされている方多数な11/12(土)公開『この世界の片隅に』です。
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 時代は日本が戦時中の頃。広島から軍港の街・呉にお嫁にやって来た18歳のすずさん(声:のん)がこの物語の主人公。見知らぬ地、見知らぬ人との生活、そして戦争がどんどん日常に入りこんでくる中でひたむきに生きるすずさんの日々を描きます。

 本作の監督・片淵須直さんの前作「マイマイ新子と千年の魔法」は口コミで評判が広がり、熱いファンの人気を獲得。本作も製作決定前にクラウドファンディングで支援者を募り、目標の2000万円を遥かに上回る4000万円近くの支援金が集まり、「この映画が観たい!」という観客の声が形となった1本。という訳で映画が完成する前から多くの方に愛されて誕生した、という一般的な映画とはちょっと違うところから出発しています。

 そしてそんな評判を受け、私も期待を胸に映画を観ましたがもう涙、涙でした。映画の冒頭は子供だったすずちゃんがどんどん成長していく過程がテンポ良く、ポンポンと進んで行きます。その日常風景は、戦争こそ知らないけれど昭和生まれ、田舎育ちな私にとっては懐かしい風景ばかり。寒い日に冷たい手を妹のほっぺにくっつけて「ひや~」と言いながら走ったり、好きなことに夢中になることで自分の居場所を見つけるすずちゃんはどこか「自分もそんな子供だったな~」なんて思い出されます。のんびりでおっちょこちょいで、失敗もしちゃうけれど「あちゃ~」と困った顔になるすずちゃんを見ていると何だかほんわかした気分にもなれちゃう。
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お年頃になってもどこか幼さが抜けきらないすずちゃんが見初められ、結婚するために初めての環境で生活を始める。奥さんになっても相変わらず失敗を重ね「あちゃ~」顔になったり、だれにも言えない悩みを抱えながらもいつもニコニコ笑顔は絶やさず、当たり前の日々を彼女なりに精一杯生きている。でもそんなすずちゃんの生活にも戦争がジワジワと近付き、もともと充分でなかったものがどんどん手に入りにくくなったり、生活が規制されることが増えていく。そんな中でも持ち前の想像力だったり、生活の知恵で「なるようになるさ~」と日々を過ごす。"戦争"の姿がこんな風に描かれた作品をこれまで観たことがなかったので、ちょっと驚いたぐらいです。
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でもそうやって人が逞しく生きていてもあっけなく、一瞬のうちに大切なものを奪うのが戦争であることも同時に描かれる。その時、現実に引き戻されるのです。「そうだ、それが戦争なんだ」と。誰も望んでいなかったのに、何か悪いことをした訳でもないのに、気付けば世の中は戦争をしていて、人は傷つき、大切なものが無条件に乱暴に損なわれる。

それまでどんな時も持ち前の朗らかさで「あちゃ~」と笑顔を絶やさなかったすずちゃんさえ、悔しさに涙する。そしてここで描かれてきたことは決して戦時中のことと区別されるものではなく、現代が何だか妙な方向に向かっている気配を少なからず察している私たちはすずちゃんの生活も今もそう変わらない、むしろ地続きで繋がっていることに気付くと思うのです。
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毎日の当たり前を当たり前のように生きたい、それを幸せと感じたい、そう願っているのはあの当時の人も今の私たちも同じなハズです。だからすずちゃんの想いが今の自分にも刺さって、刺さって涙が止まらないのです。"戦争"を描いた映画だったのに、その悲しさ、やるせなさよりも私に一番残ったのは、今の暮らしが愛おしい時間の積み重ねで、当たり前に目の前にある暮らしをすずちゃんのように大切に生きたい、そんな願いだったのです。

 そして、今年No.1と本作を評価する皆さんのオススメ・ポイントは何と言ってもすずちゃんの声を担当した能年玲奈さん改め、のんさんの女優としての才能です。
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彼女がこの映画により輝きを与えたことは映画を観れば誰もが知ることになるでしょう。彼女の代表作はこれまであまちゃんだったかもしれませんが、それ以上にすずさんの声を演じたのんさん、という紹介が今後、ぴったりになっていくと思います。こんな素敵な作品にそう出会えることはありません。是非スクリーンでご堪能下さい!

©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
By.M

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