ウラシネマイクスピアリブログ

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『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』

 映画のジャンルの中で私は“青春映画”が大好きです。中でも一夜の出来事にフォーカスし、その日の終わりが始まりの一歩にもなる・・みたいなものは特に。これまでそういった瞬間をセンチメンタルに描く名作はいくつかありましたが爆笑しながら晴れやかに次の扉を開ける主人公たちを描くものには初めて出会った気がします。今回紹介するのは8/21(金)公開『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』です。

 タイトルの“Booksmart”とはお勉強ばっかりで世間知らず、と言った意味。主人公のモリー(ビーニー・フェルドスタイン)とエイミー(ケイトリン・デヴァー)は高校時代を勉強と互いの友情に捧げていたブックスマートな二人。希望通りの進路へ進むことになった二人は嬉々としていたのですが、遊びまくっていたと思っていたチャライ同級生たちも有名大学や企業への進路が決まっていたことを知ります。「自分たちの高校生活、何だったの??」と唖然とした二人は失くした青春を一夜で取り返すべく、呼ばれてもいない卒業前夜のパーティーに潜りこもうとするのです。

 本作はズバリ今の“青春映画”の決定版!冒頭からガンガンな音楽に合わせ、「やっと会えたね」「昨日ぶり?!」と言いながらへんてこダンスを踊り登場するシーンからもう最高でしかありません。モーリーとエイミーはいわゆる優等生ですが、だからと言って“高校生活黒歴史”みたいな感じもなく、彼女たちなりに謳歌しています。

むしろ意識高い系を通していたことで未来の道筋は見通せていて「ごめんあそばせ~」と上から目線でいたぐらいだったのです。他のクラスメイトたちが遊びも学びもバッチリやっていたと知るまでは・・・「えっ、人生は1つの事しか手に入らないんじゃないの?」と。そこからの青春を取り戻せ!的、起死回生大作戦がとにかく楽しいんです。

 これまでの映画だったらきっとその過程は主人公が恋に落ちて変わっていくのが関の山だった気がします。でも二人は違う。いえ、年頃の女の子、恋愛にも興味はあるし、実際エイミーは心を寄せる女の子がいて、彼女に近付きたい思いから卒業パーティーに潜り込もうとします。(こういうサラっとした描かれ方もうまい)
でも実際問題、“友達”付き合いって一番大切じゃないですか。気の合う友達がいて、毎日がフツーに楽しいことがどれだけ大切か。(このフツーに楽しいってのが大事!)

 ユーモアに溢れ自分の好きなものがわかっている二人はとても魅力的で、パーティー衣装に身を包めば互いに褒め合い、どちらかがネガティブ発言をすると何とも素敵な言葉で叱咤する、その関係性は本当に愛おしい!でもついに卒業パーティーに乗りこみ、他のクラスメイトと卒業前夜にして初めてきちんとふれ合っていく中で二人では心開いていたけど、それ以外の子は知りもしないで型にはめていたことに気付いていくのです。自分も“ブックスマートな子”とレッテルを貼られるのは嫌だったのに、結局自分も同じことをしていたと・・・

そう、人は“知らない”というだけで差別しがち、「こういうもの」と決めることで傷つけられない逃げ場所を確保し安心しがちなのです。そして大切な本質を見失い、またそれを知ることもなく通り過ぎることがどれだけ残念なことか・・・。加えてクラスメイトを知らなかった以上に大好きだった親友をも型にはめていたり、自分自身にもそうしていたことにも気付き、二人は本当に失ってはいけないものを取り戻し、自身を開放していきます。

「もっと早く気付けばよかったよー」と思う瞬間があるかもですが、二人の未来は始まったばかり。こういう出会いや経験を経ることは大人への通過儀礼みたいなもんですから。本作はそれを経験済みの大人が観ても、心が元気になるHAPPY MOVIEです!

 これまでの“青春映画”の作風を確実にアップデートさせた監督は『トロン;レガシー』や『リチャード・ジュエル』の女優オリヴィア・ワイルド。自身も俳優だからか、スクリーンに登場するサブキャラに至るまでみんな魅力的で愛が溢れています。

まさか彼女にこんな才能があったなんて!と言う訳でその手腕が評価され既に2本の監督作品が決まっているとか。今後も彼女の活躍が楽しみです!

By.M