『オードリー・ヘップバーン』
太い眉、大きな瞳、スレンダーでバンビのような愛らしさがトレードマークと言えば伝説の映画スター、オードリー・ヘップバーン。彼女が63才の若さで亡くなってもう30年もの月日が経過していますが、それでもなお彼女の代表作『ローマの休日』や『愛しのサブリナ』、『パリの恋人』などなどオマージュを捧げられたCM、映画などは今もたくさんありますし、永遠のファッションアイコンとして女性誌をにぎわすことも。そんな彼女の初のドキュメンタリー映画、5/6(金)公開
世界中の人たちから愛された、いや現在進行形で愛されているオードリー・ヘップバーン。私もTV放映されていた『ローマの休日』『ティファニーで朝食を』を見て彼女を知りましたがその時既に現役の女優としての仕事からは遠ざかりユニセス親善大使として活動をしていたイメージが強くあります。その姿はハリウッド女優という華やかさを感じさせず、それでいて強い信念を持ち、凛とした佇まいで生きているように見え、その背景にあるものが何なんだろう、と思ったものです。
今回ご紹介する本作は家族や俳優時代の仲間といったとても近しい人々がオードリーの人生について語り、また彼女自身の肉声のインタビュー映像もたくさん盛り込んでオードリーのプライベートな姿を描いていきます。
オードリーの語られてこなかった人生は正直、辛く不運な出来事に翻弄されていたことがわかります。恵まれた家柄の家庭で生まれながらも両親は不仲で離婚、父親に捨てられた子供時代。第二次世界大戦に突入し、食べるものも食べられない中でもバレリーナになりたい夢を追った少女時代。後に彼女が2度の離婚を経験したことは父親から愛を得られなかったことへのトラウマに思えるし、晩年にユニセフの活動に全てを捧げたことも子供時代に戦争を経験したことなどと結びついていたんだろうな、と彼女の悲しい記憶はずっとその後の人生に影響を及ぼしていたことを容易に想像させます。
愛されなかった記憶が愛されることを願い、だからこそ自分も心から愛することを選ぶ。そのために仕事よりも家族と一緒にいることを優先し、大切な家族を守るために自身のことは多くを語らない。満足に食事も学問も受けられず愛情に飢えた子どもたちを救うためなら自身のキャリアも利用し、また体調が悪い時でも必要とされれば世界中どこまでも駆けつける。その意思が強ければ強い程、彼女の心の底の憂いを知るようでちょっとやるせない思いになるのも正直なところです。“世界中から愛される”オードリーが切実に本当に愛されることを望み続けていた、と感じられるから・・・
それでもこの映画で彼女を知るとそんな辛かった想いすら愛する子供たちと共に生きること、愛を欲する人には惜しみなく注ぐこと、そういったプラスの力でもって乗り越えようとしていたオードリー・ヘップバーンの姿が生き生きと浮かび上がってきます。
哀しみや苦しみを美しい心の形でもって良きものを導こうとしていたオードリーの生き様を知るにつけ、ますます彼女に魅了されると思います。
By.M
(C)2020 Salon Audrey Limited. ALL RIGHTS RESERVED.