『カラーパープル』
ピューリッツァー賞を受賞したアリス・ウォーカーの小説「カラーパープル」をスピルバーグ監督が実写化したのが38年前。その後ブロードウェイミュージカルとして舞台で人気を博し、新たにミュージカル映画としてスクリーンに登場です。今回ご紹介するのは2/9(金)公開『カラーパープル』です。
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父に虐待され、10代で望まぬ結婚を強いられたセリー(ファンティジア・バリーノ)。唯一の心の支えは妹のネティ(ハリー・ベイリー)だったが彼女とも離れ離れになり、不遇な日々を過ごしていた。そんな中、様々な出会いが彼女を変えていく・・・
主人公のセリーの境遇は壮絶という言葉で片付けられないほど、辛く厳しいものでした。3人の子供をもつミスター(コールマン・ドミンゴ)と呼ばれる男と結婚させられ、自由なんてこれっぽっちもない。日常的に暴力を受け、「醜い女め」とまで言われる。まるで奴隷のような扱いに映画を観ながら腸が煮え返る思いになりますが黒人差別も色濃くあるこの時代、後ろ盾も何もないセリーに逃げる場所すらなかったというのがもっと辛い・・・妹のネティと再会することだけがよすがなんて・・・
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でもそんなセリーが一日一日をなんとか生き延びていけたのは個性的でパワフルな女性たちとの出会いでした。一人はミスターの愛人で歌手のシュグ(タラジ・P・ヘンソン)。自分の夢を叶えるため親の反対を押し切って自立している彼女は「あなたは素敵なんだから」とセリーに自分を愛することを諭します。もう一人は義理の娘ソフィア(ダニエル・ブルックス)。
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DV夫ミスターの息子ハーポ(コーリー・ホーキンズ)と結婚した彼女ですが、例え最愛の人であっても自分を傷つける存在には断固「NO!」と言える芯のある女性。朝ドラ「ブギウギ」のセリフじゃないですがまさに「強く、逞しく、泥臭く、そして艶やかに!」な生き方の二人がセリーを励まし、鼓舞し、彼女の自立をサポートしていきます。
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本作はいわゆる女性同士の連帯を描く“シスターフッド”映画ではあるのですが、悪の権化的存在ミスターをただ悪者に描いてはいないのもポイント。セリーを虐げていた彼もその父親をピラミッドの頂点とする家父長制の駒でしかなく、父親に絶対服従であったこと、そこに自分の意思は存在しなかったこと、そして息子ハーポがその悪しき流れに疑問を持ち始めたことも描かれ、“断ち切ること”、“赦すこと”の意味も問うていきます。
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登場人物は誰しもが苦しみを抱え、その身に起こっていることはヘビーなことばかりなのに、それが力強い歌、抜群の歌唱力、エネルギッシュなダンスでもって描かれるので自然と観ているこちらにも力が漲ってくるのがこの映画の魅力。「ちょっと最近嫌なことばかりで・・・」と心が弱り気味なあなたにこそ本作でエナジーチャージをしてほしい。この高揚感はスクリーンでこそ体感していただきたいですし、もちろんミュージカル映画好きの方は必見です♪
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