ウラシネマイクスピアリブログ

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『侍タイムスリッパー』

 8月に都内の劇場1館からスタートし、公開9週目にして週末動員ランキングベスト10入りを果たした話題の映画がついにシネマイクスピアリでもはじまりました。今回は10/18公開『侍タイムスリッパー』をご紹介いたします。

 物語は雷に打たれて現代の時代劇撮影所にタイムスリップした幕末の侍・高坂新左衛門(山口馬木也)が剣の腕を武器に時代劇の“斬られ役”として新たな人生を始めちゃう!というお話。

 タイムスリップものの王道「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズを始め、最近ではタイムリープものの映画も数多く作られてきましたが「これがあったか!」と先ずはそのアイディアに唸らざるを得ない導入。だって、幕末の侍がタイムスリップした場所が京都の時代劇撮影所なら、違和感がないですもんね。

 主人公の新左衛門は記憶喪失になったガチ時代劇愛に溢れるエキストラか何かに間違われ、でもその生真面目さでもって撮影所の助監督の優子(沙倉ゆうの)や寺の住職夫婦らに気に入られ助けられ、侍魂を持ったまま、どんどん現代社会に順応していきます。

 タイムスリップしてきた人が現代の生活で初めて見るもの経験するものに「なんじゃ、こりゃぁぁーー」と驚愕するあるあるな展開のコミカルさは言わずもがな、真面目な人が一生懸命に何かに打ち込む時に漏れ出る可愛げが物語の随所に散りばめられているので、新左衛門が周囲に受け入れられていく過程と共に、観客までも彼の魅力にどんどん取り込まれていきます。

 でも新左衛門が“斬られ役”としてメキメキ力をつけていく一方で、時代劇というエンタメが斜陽化して久しい状況の中で、彼が参加していた時代劇ドラマも打ち切り危機にあうエピソードが挿入されたりと、“時代劇”という文化を残したい劇中の人々の思いと現代のそれがオーバーラップして、胸熱に!

 実際、本作はわずか10人のスタッフたちの手によって作られた自主製作映画なのですが、衣装、かつら、メイクなどは今でも時代劇の現場で活躍している第一線のプロたちが集結しているそうで、低予算映画とは思えない本物感が伝わります。キャストも時代劇ファンなら顔なじみの山口馬木也さん、冨家ノリマサさんらが参加し、東映京都撮影所も撮影に全面協力。時代劇のプロたちが本作完成の助太刀に加わり、彼らの仕事に対する誇り、熱いパッションまで透けてみえてきて、どんどん気持ちも高まっていきます。

 特に私の推しポイントは新左衛門が“斬られ役”として教えを乞う、殺陣師・関本役の峰蘭太郎さん。東映京都撮影所・斬られ役の第一人者というとても立派な方を私、この映画を観るまで存じ上げておりませんでしたが、スクリーンの中での立ち姿一つで素人目にもわかるレジェンド感、その佇まいに惚れました。そんな達人・関本と稽古をする新左衛門とのやり取りは真剣がゆえにコミカルなシーンとなっていて、随所でほっこり。でもここぞという時に真剣勝負という緩急ある展開がもうたまりません。

(後ろ姿でもわかるこのレジェンド感よ!)

 この映画が作られるまでの過程(監督は米農家兼映画監督、私財を投じたため撮影終了時の預金残高は約7000円・・・・など)を知れば知るほど面白いし、8月から公開がスタートし今もなおクチコミでその人気がどんどん広がっているというのがなんとも夢があるじゃないですか♪

 観たら最後、登場人物たちを、この映画を好きにならずにいられない、2024年を代表する愛され映画なので、お楽しみくだされ~!

By.M