『オン・ザ・ロック』
今回は先週に引き続き、新進気鋭の製作・配給会社A24印の10/2(金)公開『オン・ザ・ロック』をご紹介いたします。
作家の仕事をしながら育児にも励み、毎日忙しく過ごしているローラ(ラシダ・ジョーンズ)。ある日、夫のディーン(マーロン・ウェイアンズ)が浮気をしているんじゃないか、と勘繰るようになってから気分が晴れません。父フェリックス(ビル・マーレイ)ならいいアドバイスをくれるんじゃないか、と相談を持ちかけるのですが・・・
監督はソフィア・コッポラ。父は巨匠フランシス・フォード・コッポラ。彼女はデビュー作の『バージン・スーサイズ』から今に至るまでずっと一線で輝き続けて来た映画監督です。都会的なセンスも抜群で(言葉にすると一瞬にして野暮にはなりますが・・)オシャレ番長としても知られています。そんな彼女が旧友でもあり、同じく偉大な父を持つラシダ・ジョーンズ(お父さんは音楽界のレジェンド、クインシー・ジョーンズ)と『ロスト・イン・トランスレーション』以来の起用となったビル・マーレイを迎えニューヨークを舞台に描いたのが本作です。
物語の導入は旦那の浮気疑惑です。ローラは在宅仕事が主なのでおうちのこと全般を任され朝から晩まで大忙しです。「あれどうしよう?」と夫に相談しても「君が決めてくれていいよ~」と言われてしまうので仕事は減りません。とは言え旦那さんへの不満よりも「日常に忙殺される自分の魅力が薄れた・・・」とか思われたらどうしよう、という心配の方が勝っているようにも思えます。そんな時にどうも夫と同僚との行動が怪しい・・と疑ったがため、ローラは動揺してしまいます。
そこで頼ったのが、自由奔放な父フェリックス。探偵をやとったり、自らローラを誘って尾行したりと不安な娘をなだめるどころか久しぶりに娘と一緒で楽しんでる?と思えるぐらい彼女の生活に浸食し、自分の世界に彼女を巻き込んでいきます。ちょっと一昔前の価値観を持つお父さんではあるのですがこれをビル・マーレイが演じるので憎めないし、とにかく可愛げしかない。一言でズルい!
そして調べるにつれ夫ディーンの行動はうさんくさくなるばかりなので、父娘の探偵ごっこもエスカレートしてどんどん可笑し味が爆走していきます。物語の入口は夫婦の関係性だったけれど、次第に父娘との関係性にフォーカスされていきます。
大人になっても娘はいつまでも娘、ずっと繋がっていきたい父とそんな父に影響を受けて育ちながらも自分の世界を形成し大人になった娘。どこか恋人同士を思わせる関係性を感じさせながらもそれぞれの日常や感情がちょっとずつズレていく様、その切なさを笑いと共に描いていてキュンとなるのでした。
本作は舞台となるニューヨークの街並みも重要なファクターです。ニューヨーク好きならたまらない夢見る王道の風景、ライフスタイルが広がっています。「こんなニューヨーク、戻って来るのかな?」という気持ちも同時に抱かせられ、どこかおとぎ話を見ているようでおセンチな気分にもなったりするのでした。
改めてコロナが憎い・・・涙
PS、ラシダの服装、髪型とスタイリングがどれも素敵!
さすがオシャレ番長ソフィアだわ~。
By.M
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