『未来を花束にして』

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 皆さん、こんにちは女住人Mです。何やらトランプ大統領が誕生するや否や、方々でザワザワが増してきました。いつもより世間の目が政治に向いている、そんな今、観て頂きたい1本、1/27(金)公開の『未来を花束にして』をご紹介します。
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 舞台は1912年のロンドン、女性は法の外に置かれ、男性より労働時間は長く、賃金は安く、選挙権も親権もなかった時代。モード・ワッツ(キャリー・マリガン)は7歳から洗濯工場で働く24歳の女性。夫(ベン・ウィショー)と幼い子供との3人暮し。ある日女性参政権運動の活動家である友人の代わりに議会の公聴会で証言したことを機に、エメリン・パンクハースト夫人(メリル・ストリープ)率いる女性参政権運動に身を投じて行く様を描きます。

 女性への参政権が与えられたのは日本では1945年、アメリカで1920年、その数字を見ると「そんなに歴史が浅いのか!」と改めてビックリしてしまいますが、当たり前にある権利も「こういう人たちの手によって獲得出来たのか・・・」ということを教えてくれるのが本作。
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主人公のモードの生活は貧乏だし、劣悪な環境での仕事は辛かったのですが、唯一愛する家庭があったことが生きる支えでした。でもある日、公聴会に出席し、工場での待遇や自身の身の上を語っていく中で「自分には違う生き方があるのかもしれない」と気付くのです。それまでは気にもしていなかった、いやもしかして見て見ぬふりをしていたことに対し「あれ?これって別の選択肢があるのかも」と。

でもその時代は今の当たり前がなかった時代。男性と同じことを求めることが悪とされ、時には反政府分子と見なされ逮捕、暴行を受けることも。パンクハースト夫人の「言葉よりも行動を」のスローガンに鼓舞されたモードは最初こそ戸惑いを覚えつつも、妻の行動をよく思わない夫からの仕打ちや自分と同じような境遇を生きるしかない少女を見た時に「自分たちが求めていることは今だけでなく、未来の子供たちにこそ必要な権利なのだ」と気付き、さらに活動にのめり込んでいきます。
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(パンクハースト夫人を演じるメリル・ストリープ。カリスマ性溢れる役どころを貫禄たっぷりに演じています。)

 今では女性の政界進出も珍しいことではありませんし、日本の選挙権も18歳に引き下げられ、多くの人々の民意は反映されやすくなってきました。でも投票率は相変わらず低迷したままで、大切な1票をないがしろにしている人が多いのも事実。劇中でも権利を訴える女性たちを「どうせ何も変わらないのに・・・」と冷めた目で見る人々の様子も描かれます。でもこの映画を観た後では、「私の1票ぐらいがどうなろうと関係ないだろうしな」なんてことは決して思えません。当たり前にあるものは決してずっとそこにあるとは限りませんし、この当たり前を手に入れるために多くの人の犠牲が払われたのですから。
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 女性参政権実現のために暴力に訴えてでも活動する市井の女性たちが描かれることに関しては、個人的にも考えるところは正直ありましたが、この作品を私は"気付きの映画"だと思っています。知らない、興味を持たないことがどんどん危険な環境を作り出すこともあります。いろいろな変化が訪れている今こそ、知ることは大切なんだな、と。

By.M
© Pathe Productions Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2015. All rights reserved.

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